2019年法改正:建築物省エネ法

2019年2月15日政府は、建築物省エネ法の改正案を閣議決定し、国会に提出しました。

報道発表(H31年2月15日)

改正案の柱は、

(1)省エネ基準の適合義務対象に中規模建築物を加える

⇒延面積の下限を2000㎡から300㎡に見直す。

(2)小規模建築物・住宅の設計時に、建築士に対して省エネ基準への適合可否など建築主への説明義務を課す

⇒小規模(延べ面積300㎡未満想定の)住宅・建築物の新築等の設計の際に設計者(建築士)から建築主への省エネ性能に関する説明を義務付けることにより、省エネ基準への適合を推進する。

(3)大手ハウスメーカーなどに住宅トップランナー制度の全面展開

⇒建売戸建住宅を供給する大手住宅事業者に加え、注文住宅・賃貸アパートを共有する大手住宅事業者(大手ハウスメーカー)を対象に、トップランナー基準(省エネ基準を上回る基準)に適合する住宅を供給する責務を果たし、国による勧告・命令等により実効性を担保する。

の3点です。

その前に、そもそも「省エネ」とは??という方のために簡単に説明します。

「省エネ」とは「省エネルギー」の略です。石油や石炭、天然ガスなど、限りあるエネルギー資源がなくなってしまうことを防ぐため、エネルギーを効率よく使うことをいいます。石油や石炭などの化石燃料を燃焼することでエネルギーを得ることができますが、地球温暖化の原因である二酸化炭素を排出しています。地球温暖化にストップをかけるためにも、一人ひとりが問題意識を持ち、省エネを実行することが大切です。一人では効果が少ないように思えますが、全世帯で省エネすれば大きな成果が得られます。

今、政府は住宅の質の三大要素の一つである「省エネルギー性能」に力を入れています。住宅の質三大要素とは「耐震」「省エネ」「長持ち」で、地震大国である日本では、まず耐震性能から義務化が行われ、これまで大地震が発生して建物に甚大な被害が出るごとに基準強化されてきました。耐震の次に政府が取り掛かかっているのが「省エネ」なのです。

改正案は、社会資本整備審議会建築分科会の建築環境部会(部会長:深尾精一・首都大学名誉教授)が19年1月にまとめた報告を踏まえた内容で、国会で成立すれば、省エネ基準適合義務化の対象拡大と建築士省エネ性能説明義務の規定については交付から2年以内、在宅トップランナー制度の対象拡大は半年以内に施行するようです。

(1)は90%以上の中規模建築物(非住宅)ですでに実施済なので特に問題はないかと思います。(3)に関しては、国による勧告・命令なので「大手ハウスメーカーはトップランナー以上の性能で建てなさい!」ということです。実際、大手の注文住宅はこのレベルは上回っているので問題はないと思いますが、建売分譲や賃貸アパートの場合は、「利回り重視」のものもあるので売り上げが鈍化するのは間違いないと思います。

(2)に関しては、もともと2020年から義務化される予定だったのが、「説明」が義務となったことで、その判断を建てられる方(建築主)に委ねることになったのです。実際、お施主様(建築主)がどんな家を建てるかはお施主様の自由ですし、その家の持つリスク(断熱だけじゃなくて耐震性やメンテナンスなども)をきちんと納得した上で契約したいというのは当たり前の心情です。義務付けがなくてもその家がどういう位置づけなのかきちんと説明はすべきであり、長くお付き合いするのであれば当然のことだと思います。

ただ、もちろん住宅自体の金額は上がるわけですからお施主様にとってみれば思った広さの家が建てられない、とか思ったような設備が入れられない、というところで夢をかなえられない可能性もあります。個人的には、寒い家というのは「ヒートテック」などの心配もありますし、もし法律が変わって義務化された場合、建物自体が「既存不適格」となり価値も下がってしまうので、お施主様の健康や資産などを考えるのであれば、省エネ義務化はしても良いとは思います。

日本では家に省エネルギー性能の最低基準がなかったため、無断熱の家でも合法で、夏は暑く・冬は寒い家がいくつも建てられています。環境意識が高まっている昨今、冬に暖房が必要となる国で無断熱で家が建つ国は先進国では日本ぐらいといっても過言ではありません。日本と世界を比べるとダントツで日本で起きる浴槽での溺死「ヒートショック」が多いのです。住宅先進国ドイツと比べると日本は17倍の「ヒートショック」が起きています。海外には浴槽に入る文化がないというのもあると思いますが…(^_^;)それを抜きにしても、この「ヒートショック」の死亡事故は交通事故の死亡者数よりも多いのです。南国といわれる鹿児島・宮崎でも「ヒートショック」の死亡事故は多く、逆に南国といわれる地域の方が死亡事故は多いのです。それだけ、日本は住宅性能・断熱に対する認識が少なかったのだと思われます。

説明義務ということで、設計者や建築会社側の考え方や説明次第で、お施主様の受け取り方も様々だと思います。お施主様との信頼関係の上で家づくりは成り立っています。家は人生で一番高い買い物です。「省エネ」に関しては補助金支援もああるので、10年後、20年後…も安心して暮らせる家づくりを、これからも提案していきたいと思います。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました(*^▽^*)